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他のVA音源との比較

〜どのVLを選ぶか〜


 VA音源は管楽器シミュレーションを得意としウインドシンセの音源として非常に相性が良い音源です。1993年に発売されたVA音源第1号機VL1は新方式のシンセサイザーとして鳴り物入りで登場し(ヤマハによるVL1スペック、およびそのコンセプト:DESIGN:VL1)、音質の評価は非常に高かったものの2音ポリ発音としては価格も高かったためか(47万円)、あまり一般には普及しませんでした。1996年になり低価格なVL70-mが発売され、WXシリーズの推奨音源としてその可能性を大きく広げました。以降たてつづけにVLプラグインボード、ソフトウエアVLなどのVA関連製品が発売され盛り上がりを見せましたが2001年のソフトウェア音源S-YXG100 PVLを最後にVA音源新製品は発表されず現在に至っています。そのような現状をふまえVA音源のなかでウインドシンセの音源として最適なものはどれか検討してみました。

2008年3月現在、新品で入手できるVA内蔵音源は

があるのみです。

生産終了となっているVL内蔵音源には

があります。

 なおWindows上で動作したS-YXG100plusおよびS-YXG100 PVLというソフトウェア音源がありましたが、いずれもWindows95/98/Meでの動作(2000/XP/Vista非対応)であり、2007年3月末にサポートも終わっていますので現在は使いようがありません。またWindows98が動くようなパソコンでは動作そのものが遅くレイテンシー的に演奏に使える水準までいっていなかったこともありこの選択肢はまずありえません。(このVLソフトウェアの当時の検証記録はこの頁最後の補足参照)。現状でソフトシンセでVL音源的な管楽器音を求める場合は他社の物理モデリング音源(「BRASS」等)やサンプリング音源(「Garritan Jazz and Big Band 」等)を検討した方が良いと思います。これらのソフトウェアではパソコンのスペックにも依存しますが充分プロ品質の演奏が可能なレベルにきていると思います。

またハードウェア音源のうちエレクトーンは特殊でありウインドシンセでの使用も考えられていない仕様になっているので除外するとして、他の音源のそれぞれの長所と短所を並べます。

VL70-m 長所 WX端子を備える。ピッチベンド表示メーター有り。本体に音色保存できる。比較的安価。Expert Editorで細かな音色エディットが出来る。
短所 モノ発音。VL1より出音に劣るらしい。(D/A変換の問題か??詳細調査不足)
PLG100/150VL 長所 対応音源を持っていれば安価。レイヤー化等対応音源との音色の連携が可能。DTMの時はセッティングが楽。
MOTIEF等のハイグレード音源が母艦の場合エフェクトがより高品位、D/A部分のグレードが高い等、音質的にVL70-mより有利。
短所 カスタム音色の本体保存ができない。WX端子なし。ピッチベンド表示なし。なおVL音源部はVL70-m同等。
VL1/-m 長所 2音ポリ。VL70-mよりVLのバージョンが高い(VL ver.2)。Expert Editorで細かな音色エディットが出来る。本体のみで音色保存可能。
短所 中古のみ。かつ高価。サイズ大きい
VL7 長所 VL70-mよりVLのバージョンが高い(VL ver.2)。Expert Editorで細かな音色エディットが出来る。本体のみで音色保存可能。
短所 モノ発音。中古のみ。高価。サイズ大きい
EX5,EX5R 長所 モノ発音。本体のみで音色保存可能。VL以外の音源部と連携可能。D/A変換やプリアンプの性能から想像するとVL70-mより出音は良さそう
短所 高価。WX端子なし。サイズ大きい。

結論

 WX5での演奏にどれを使用するかということですが、結局現状ではVL70-mがおすすめです。価格から考えると多機能であり持っていて損はありません。「WX端子がある」「ブレスセンサーやピッチベンド量の表示メーターがついている」だけでもVL70-mが買いです。適正なピッチが目で確認できるピッチベンドメーターがあると設定が圧倒的に楽ですし安心感が違います。少なくともシンセの接続やエディットなのに不慣れな方、ウインドシンセ初心者には絶対的にVL70-mをおすすめします。

 現実的な第二の選択肢は、PLG150VLをプラグインボード対応の音源に挿して使用することです。この場合母艦としておすすめなのは2008年3月現在MOTIEFシリーズ(サイズ的には特にMOTIEF-RACK ES)です。プラグインボードを使用した場合、Expert Editorを使った細かいエディットが出来ない、カスタム音色の保存ができないといったデメリットはありますがこれらのエディット機能は使わなくでも本体内でのエディットのみでかなりのエディットができますし(本体でのエディット結果は保存可能)、何よりMOTIEF等のハイグレードシンセであればエフェクト部分やD/A部分はVL70-mより高品位なので、結果的にVL70-m単体で出る音よりは高品位であると言えます。もうひとつのデメリットとして現実的にいちばん不便なのはWXと組み合わせて使う場合「WX端子およびブレスセンサーやピッチベンド量の表示メーターがついていない」ことになると思いますが、EWI用のサブ音源としてVA音源を考えている場合はPLG150VLはかなり良い選択肢だと思います。下の写真は2005年の楽器フェアのYAMAHAのデモンストレーションにおける鈴木明男氏の使用楽器ですがWX5-VL70m-MOTIEF-RACK ESを組み合わせていらっしゃいます。

ここでは、VL70-mはピッチベンドメーターとしてだけ使用しており、実際の音はMOTIEFに挿したPLG150VLとアナログプラグインボードから出ていました。会場のPAが良かったことを差し引いても普段の自分のVL70-mの音より良い音がしたような感じはしました。MOTIEF-RACKでしたらサイズも1Uですみますし、他のプラグインボードもさせますし、もちろんMOTIEF内蔵の音の利用およびそれらとのレイヤーもできていろんな音づくりが楽しめるのでシンセの扱いに慣れている方にはかなりおすすめできる組み合わせですね。なおPLG100と150VLの違いですが、対応音源が違うだけで音色や音質の差はないようですが、(YAMAHAによるPLG100/150VLの比較表)MOTIEF含め最近の製品は150VLのみしか対応していないようですので事前によく調べたほうが良いでしょう。(参考:PLG100使用感想

 EX5/Rは中古で安価なものがみつかればおすすめできます。VL70-mと同じVLボードを内蔵したハイグレードシンセですのでMOTIEF+プラグインボード相当の機能と音質を1台で得る事ができます。

 VL1/mやVL7はかなりマニアックな選択になりますのでおすすめしませんが今に至るまでVLの最高峰はVL-1(m)のVer.2であることは確かではありますのでやはりあこがれの存在ではありますね。

 また最初に簡単に触れましたが最近はYAMAHAの他のメーカーのソフトウェア音源の進歩が著しいですから、そういった選択も考えられます。物理モデリング音源ではArturiaのBRASS等やサンプリング音源Garritan Jazz and Big Band 等がウインドシンセでの演奏も想定されて設計されており考慮に値します。また流行のビンテージアナログシンセのソフトウェアシミュレート音源含めパソコンのスペックにも依存しますが充分プロ品質の演奏が可能なレベルにきていると思います。

今後の希望(私見)

 現状ではVL70-mがベストなわけですが不満がないわけではなく、モノフォニック・VLのバージョンが古い・カスタム音色が6つしか保存できない、など改善してもらいたい点は多くあります。またプリセット音は無難なものが多くVLの実力を使い切っていない感じがします。そもそも96年の発売からもう12年(!)ですよ。電子楽器としては考えられない長寿機種。これはWXシリーズの音源としての需要あってのものだと思いますが、当時流行であったMIDI/DTM向け生楽器シミュレーション音源を考慮したスペックは完全に時代遅れと言えます。DTM用ハード音源がほぼ死後になりつつある今、ウインドシンセでの演奏に特化したVAでなければ出せない音を開発して、そういう音+2音ポリ以上+大容量ユーザーメモリの音源が欲しい!です。AKAIのEWI4000sが出てしまった今、そろそろ何とかしてもらいたい、というかEWI4000sが出てしまった以上は音源内蔵にせざるを得ないわけでかえって開発が難しくなってしまったとは思いますが、たとえ外部音源であっても良いものを出せば、WXだけでなくEWI用の2台目の音源としても需要があると思うんですよね。例えばこんなのとか。おねがいします!!!


補足:2002年当時Windows上で動作したソフトウエアVA音源の記録(2001年8月作成)

 ソフトウエアVLは安定性や発音追従性、音質など生演奏にはまだまだ不安です。読者の皆様からいただいた情報では、

 結局現状(のパソコンの性能)ではリアルタイム入力や生演奏には使えないということですね。でもDTMでMIDIファイルをつくろうとする場合はPVLの場合はうまく作ればサックス4重奏とか、金管8重奏とか、従来の常識を覆す画期的なクオリティのものが作れると思います。でもまあそこまでいかなくても、DTMの再生に華を添える目的で簡易にVLを楽しめて良いと思います。  ---補足ここまで


Nov.21.1999作成、Mar.16.2008 大幅修正更新

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