VL70-m入門＞VL70-mとは

VL70-mとは

VL70-mはVA(Virtual Acoustic）という特殊な方式で音色をつくりだす音源です。VA音源と呼ばれます。（なお最近はVAというとむしろバーチャルアナログ:Virtual Analogue（アナログ音源のシミュレート音源）という文脈で用いられることが多いですがVirtual Acousticと混同しないように）

現在の多くの音源があらかじめ決められた波形を合成したりサンプリングされた音色を再生するのと異なり、VA音源はある構造の楽器を設計し、その楽器が鳴る様子をシミュレートすることで音を出します。シミュレートする対象楽器は主に管楽器と弦楽器です。息の圧力・アンブシュア・音の高さなどの組み合わせにより複雑に音色が変化するのでより生楽器に近い表現が可能という特徴があります。VA音源を製品化しているのは現在のところヤマハだけであり、WEBで詳しい解説（YAMAHA VA音源講座)が公開されています。いくつかのVA搭載音源がありますがVL70-mはVA音源単独製品としてはでは唯一の現行製品です。（他のVA搭載音源については次頁参照）詳しい仕様はYAMAHAのWebカタログを見ていただくとして、実際に使ってみた感想を並べると

良い点として

リアルな管楽器サウンド

他方式の音源とくらべ「バーチャル生楽器」としての能力は最高に優れています。特定の状況の音色であればサンプリング音源に負ける部分もありますが、同じ音色であっても息の量や楽器のくわえかたで生楽器のように自然に音色が変化する点はバーチャル音源の面目躍如です。（ただし生楽器そのものの音が出るというわけではないので過度の期待は禁物）

WX5との相性が良く考えられている。

WX端子で接続すればWX5側の電源が不要
コントロール情報の割付によりWXで息圧・アンブシュア・ホイール等により微妙な音色操作が可能
MIDI音源にありがちなブレスコントロールによるザラツキ感（ノイズ感）が無いと言えるほど極めて低くおさえられている。
ピッチベンドとブレスコントロール量を表示するメーターがあり、WX5側を設定する際非常に便利

1Uハーフラックサイズ、各種エフェクト内蔵で持ち運びが容易。

XG音源の拡張音源としてDTMでも使用できる。

VA音源の特徴ゆえの弱点として

最適な音域が限定される音色が多い

実際の管楽器では「チューバより低い音の出るトランペット」なんてものはできないわけです。管楽器の構造を模して発音するVA音源も同様で、各音色には最適の音域があります。音色によってはこの音域の幅を超えると極端に音やせしたり、音色と呼べない音になったりして、実際に使える音域が３オクターブ程度しかなかったりします。せっかくのシンセサイザーですから幅広い音域を使って演奏したいものですが生楽器系の音色ではそれが可能な音色は多くありません。（シンセリード系の音色では音域が広いものもあります）

練習しないと演奏できない（音源の真の実力を発揮できない）

実際の管楽器では、呼吸法、口の形、喉の開き、息の量など、自分の肉体をうまくバランスをとって総合的にコントロールしないとまともな演奏が出来ないわけです。VA音源はそこまで難しくはないですが、生楽器を模している関係からそれに通じる点が多く、ピッチベンドやブレスその他のコントロールの値のバランスにより音が変化し、適切に吹かないと音が裏返ったり不安定な音程になったりしてシンセのくせにやたらとヘタクソな演奏に聞こえてしまうことがあります。逆にこの不安定さを演奏者がうまくコントロールすることで電子楽器っぽくない、「生」感覚のすばらしい演奏が可能になります。この感覚は「押せば鳴る」ような音源では得られないVAの醍醐味です。
関連して、自分の演奏法に音源の設定をあわせることも重要なテクニックと言えます。VL70-mにプリセットされている音は、とりあえずだれでも演奏できるように無難なセッティングがされているように感じます。コントロールのアサインやエフェクトを自分好みにチューンアップすることでVL70-mはより魅力的な音源に変身するでしょう。
さらに関連してVL70-mをDTM用に考えている場合は上記２点を考慮しないと期待はずれになるでしょう。VA音源はブレスやベンド、ブレスノイズ、スクリーム、といった数々のパラメータを指定しないとその真の実力は発揮できません（WX5での演奏の時はこれらの指定を連続して行っていることになります）。ですからステップ入力で音符を並べただけの打ち込みでVA音源を鳴らすと「なんだたいしたことないじゃんこれならMUシリーズの音のほうがいいや」なんてことになりかねません。導入の際はどこまでこだわった打ち込みができるのか自分と良く相談しましょう。

また他の欠点として

同時発音数「１」 (複数台同時接続で増やせますが）

それとも関連するであろうが、高価なシンセに較べると音が薄い印象をうける。

プリセットのままで「使える」音がそんなに多くない（あくまで個人的にですが。多少エディットすれば充分使えるようにはなりますが）

フォロー（？）

・・・長く使っていると欠点ばかり目に付くのものですが、価格を考慮すると全体的には非常に良くできた音源であると思います。 WXはもちろんEWIでも生楽器系音色が欲しい場合に最適の音源といえるでしょう（というかWXでは選択肢が他にないんですが）。なおヤマハでは他にいくつかのVA搭載音源が出ています。これらについては次頁で紹介します。

May.7.2000作成　Mar.16.2008最終改訂

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