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2004年前半〜2005年前半までのマイケルの新型EWIについての情報についてまとめました。(作成:Aug.15,2005)
(Aug.15.2006に病気からの復帰&EWI4000s関連の追記あり)
(Jan.28.2007に訃報関連の追記あり)
※この頁作成にあたり文中のリンクの他下記サイトを参考にさせていただきました(感謝いたします)
・日曜日は楽しいドライブ さん02004/8/30のエントリー
・RECORD 日々是修行 さん02004/8/30のエントリー
・JWSA
何の下調べもせず見に行った2004年8月29日Mt.Fuji Jazz Fes. のSteps Aheadのステージ。そこは新型EWIの日本国内公式初披露の現場でもありました。
他の参考写真はCyberfusionのレポートにあります写真(コレとかコレ)を参照下さい
改めて見てもやっぱりいろんな意味で 「なんじゃこりゃー」 な楽器ですねぇ。直接このライブを見ることができたのは全く幸いでありましたが、 観客席のほうぼうからも聞こえました 「なんだあれ!」 「なにあれ!」 「なんだあの黒い箱!?」・・・。”形”については JWSA他ネット上でも散々な言われようでした。曰く「弁当箱」「アジの開き」「ウィダーインゼリー」 ・・・・。
というわけで、 直接ライブを観たり、その後WOWOWで放送されたり、いろんなところにレポートが載ったり、楽器祭が行われたり、よくよく調べてみると既に米国等ではマイケルのバンド(クインデクテット)等のライブで使用されていたことがわかったりとか、いろいろありましたので現時点でのこの「新型」についてまとめてみます。
そもそもこの黒い箱はいったい何なのか。簡単にまとめると
ということになります。以下詳しく述べますと、
1980年代前半、AKAI製のEWIが出る前からマイケルがNyle Steiner氏製作の「Steiner Horn」を使っており その技術を導入してAKAIがサックス型のEWIとトランペット型のEVIを発売したのは皆さん御存知の通り。その後EWIはAKAIが販売継続、AKAI製のEVIは製造中止となり、EVIは再びNyle Steiner氏が開発・販売することとなりました。企業製品である以上採算や安定性を重視しなければいけないのは理解できるところです。必然的にEWIは完成度と引き替えに進化の歩みは遅くならざるを得ませんでしたが、皮肉なことに個人製作であるところのEVIは技術の進歩を迅速に取り入れ、機能的には着実に進化していきます。
既にNyle Steiner氏のサイトから「MIDI-EVI」は一般でも入手可能になっていますが、今回お披露目となったEWIは、その「MIDI-EVI」をベースにNyle Steiner氏がEWI仕様に改造したプロトタイプMIDI-EWIと言えるものです。写真を比べてみればわかりますが、外側ケースがほぼ同じだったり、EVIのトリルキーがそのまま付いてたりします。外観上の両者の違いは、運指キーの数、オクターブキー、ベンドプレートの配置、そしてよく見ると今回のEWI(以下、プロトEWIと呼ぶ)には箱の両側に金属製の輪のような部品が付いています。これはストラップなして両手で管体を支えて演奏できるようにすると同時にアースプレートも兼ねているらしいです。
MIDI-EVIのマニュアルには次のような機能が記載されていますので少なくともこれと同等の機能は有していると推定します。
実際にMt.FujiでのマイケルのEWIソロパフォーマンスにおいて、本人が音源に全く触らず、また、フットペダルなども無かったにもかかわらず音色が次々に変わっていった場面はPROGRAMMING BUTTONを使用して音源の音色パッチを変えたものと考えられます。蛇足ながらMIDI-EVIの画像ではPROGRAMMING BUTTONは本体裏側、右手親指で操作すると思われる場所にあります。従来型EWIでは演奏中親指をアースプレートから離せなかったのですがプロトEWIでは側部の金属輪がアースになっているのでこのような操作も可能となります。また同じくソロパフォーマンスにおいて、出した音にサスティンをかけていって最終的に4音くらいの4度ずらし和音等を鳴らす場面がありました(イメージ)が、これはSPECIAL BUTTONの機能(おそらくサスティン)を使っていると思われます。また演奏時には本体からはケーブルが1本だけしか出ていなかったので、おそらく電池駆動をしていたのではないかと思われます。
なおプロトEWIの実際の吹奏感としてはCyberfusionによるレポートよるとマイケル曰く「以前のものに比べるとビブラートが気持ちよくかかるとのこと。」だそうです。
音源は、Apple PowerBook G4上で走っているソフトシンセのみ。ハードウェア的にはシンプル。
他の参考写真はCyberfusionのレポートにあります写真を参照下さい
「実は今、EWI総体の物量を軽減させようという研究・作業をやっているんだ。 <<中略>> 一つのラップトップに全部詰め込んでしまおうと思っているんだ!」(季刊ジャズ批評 No.104 "マイケル・ブレッカー"/2000年No.3 P20 より引用)
2000年の「季刊ジャズ批評No.104」によるインタビューでこのような話が出てきますがこれがようやく理想的な形で実現したということでしょう。Mt.Fuji時点で使用しているソフトは、Cyberfusionによるレポートによれば
「E-Magic(Apple)のLogic, Steinberg(Propellerheadの間違い?)のReason, そしてVSTプラグインのRack MiniMoog(minimoog Vあるいはmoogmodular Vのことか?)走っている」
ということです(カッコ内は筆者補足)。そういえば2004年秋まではE-Magicのサイトにマイケルへのインタビューが載っていてLogicをベースにいろいろやっているということが書いてありました。(その後E-MagicがApple傘下になった影響かサイトの大幅改定によりこの記事は削除されてしまいましたが記録しておいたのがコチラ)このインタビュー当時ではLogic用のプラグインサンプラーEXS24、アナログシンセプラグインES2(両者とも現在ではLogic内に統合)がブレスコントロールその他との相性が良く柔軟性がありとても良いということでいろいろ研究していたようです。インタビュー中にもありますが結局マシンパワーの進化とソフトウェアの進化、双方があってやっと実現できたということなのですね。
肝心の音のほうですが音の太さについては、今回Mt.Fujiのステージで生で聴いた音は充分太いと思いました(ただし私自身往年のリアルアナログサウンドを「生」では聴いてないのでそういう意味での比較はできないのですが )ときどきEWIがきこえづらいところはありましたが、これはパッチごとの音量が揃っていなくて単純に音量が小さかった(のをPA側でカバーしきれなかった) だけなのではないかと思います。 フィルター、レゾナンス、オシレータシンクその他の音色の変化など、どれをとっても往年のサウンドにひけをとらないものではないかと感じました。また現行ウインドシンセでMIDI経由でフィルターをブレスで開閉したとき等発生するざらつきプチプチノイズについても、In A Sentimental Moodのような静かな曲やEWI以外の音が無いソロパフォーマンス中でも全然気になりませんでした。音色のバリエーションについても、実に豊富です。マイケルお得意のEWIソロパフォーマンスも披露されましたが(「Return Of Brecker Brothers」当時のパフォーマンスと割と似た構成)、サンプリング音、シーケンスされた音、アナログシンセ音、と 実に豊富。 当時10Uラック3台ほどにもなった大量の機材およびずらっと並んだフットペダル、これと同じことが、コントローラとノートパソコン1台でできてしまう。 まさに、時代の進歩ですね〜。これからはソフトシンセ、なんでしょうか。 僕もやってみたい。 WXでパワブクをブリブリ鳴らしたい。(未だにG3でOS9な私)
なお、周辺機器としてはMIDI/オーディオインタフェースが当然必要になりますが、これについては全く不明。さらにもう一つ必須(?)な周辺機器が「ドライヤー」。Cyberfusionのレポートにあります写真の左下手前側になんとか確認できますが、普通に髪を乾かすときつかう家庭用のドライヤーです。Mt.Fujiではソロパフォーマンスの直前のMC中にドライヤーでEWIを乾かしていました。唾液や手汗、本番当時降っていた霧雨等の影響を排除するためと思われます。やっぱりタッチセンサーは気を使うものなんですね。
今回のMIDI-EWIプロトはあくまでもSteiner氏によるプロトタイプ、という位置づけです。 EWIの販売権(?)はAKAIにあるので、Steiner氏もこれを販売することはできないと思われます。 ということでAKAIの動向が注目されますが、伝え聞くところによりますと
「AKAIはこのプロトタイプを大いに参考にしつつ、Steiner氏、マイケル、その他のEWI奏者と共に新型EWIの開発を進めている。またこの新型EWI用の音源も同時に開発中」
であることは確かな事実です。 ただし、発売時期、価格、外観がこのような弁当箱になるのか、従来EWI型になるのか、 音源方式はどうするのかそもそもハード音源なのかソフト音源なのか、等々、具体的なことはなんともいえないようです。
以下あくまでも私の個人的な予想ですが、少なくとも「本体からMIDI直出し」は開発経緯上確実だと思います。 よって音源も電圧制御の「純アナログ」ではなくなってしまうと思われます。そしてソフト音源だけではユーザーが限られますからハード音源も出すでしょう。とするとサンプラーの得意なAKAIですから音源方式はサンプリング方式が有力候補でしょうか????????
どのような仕様になるのか非常に興味があるところですが、意見が万が一でも反映されるのは開発中の今だけですからダメモトでAKAIに要望してみるのも良いかも????ということで、JWSAに要望用の掲示板があります。書き込んでみても良いかも知れませんね!
個人的な希望としてはコントローラの方はほぼ言うことなし、あえて言えば任意のコントロールチェンジのON/OFFだけでもいいから送信できるボタンがひとつ欲しいくらい。音源のほうは、MIDI-EWIだけでなくWX5でもスムーズに使える音源を出して欲しいですね。そしたらVL70-mから乗り換えるユーザーも多いはず。音源方式はサンプリングでも物理音源でもなんでもいいからアナログライクな音作りとマトリクスモジュレーション的なことは出来て、存在感のある音で、MIDI起因のフィルター開閉のざらつきが無くて、VL70-mみたいにほぼ全てのパラメータをほぼ任意のCCで操作できて、さらに4〜8音くらいのポリで、もちろん複数音色のレイヤーもできて、ジャパニーズフュージョン的な音色からマイケル風変態奏法音色まで各種アーティストの演奏に「似てる」プリセットを充実させて、さらにマイケルのRotateを使ったぐるぐる和音のプログラミングが可能だったら言うことなし!できればハーフラックサイズで(超贅沢・・・)
(Aug.15 2006に病気からの復帰&EWI4000s関連の追記あり)
さて、その後調べていくと、2004〜2005年にかけて様々なステージでこのプロトEWIを使用しており、機材にも変化があったりしているようです。
まずMt.Fuji(2004年8月)以前の、Quindectetでのツアー。2004年2月の来日の時は使っていませんでいしたが、同年7月のヨーロッパでのツアーの時は使っていたようです(紹介記事はココとか。写真はココとか。)。この時期のツアーはBBCのネットラジオで放送されたりもしましたがこの放送の録音(Live at the Barbican(ロンドン)2004年7月3日)を聴く限りMt.Fuji時とかなり近いEWIソロパフォーマンスを演奏していました。機材的には一月しか違わないのでMt.Fujiと同じ機材でしょう。
また、Mt.Fujiの後では2005年3月のハンコックやハーグローブとのDirections In MusicツアーでもEWIプロトを使い、このときのツアーそのものがかなりエレクトリックよりの構成だったこともあるのかソロパフォーマンスの他ピノキオとかカメレオンとかドルフィンダンスをEWIでやったようです(紹介記事はココとかココとかココとかココとかココとかココとか)。さらに、このページやこのページによると「MidiJet Pro」というワイヤレスのMIDIシステムを導入し音源にはG5のMacとソフトシンセを使ったそうです。プロトEWIは電池駆動可能ですからいよいよ完全ワイヤレスEWIまで実現・・・・。どこまで進化するんでしょう。どきどき。
そしてMt.Fujiのステージの好評をうけて行われた2005年7月からの再結成Steps Aheadヨーロッパツアーでも当然EWIが炸裂・・・と思いきや、直前に病気の為マイケルは出演キャンセル(代役ビル・エバンス)。骨髄異形成症候群で病状は深刻のようで非常に心配ですが・・・・・、とにかく回復を心よりお祈りいたします。
Aug.15,2005作成
2004年8月29日・富士急ハイランド(山梨県)内コニファーフォレスト特設ステージ
Mt.Fuji Jazz Festival 2004 / Mt.Fuji Steps Aheadのレポート
(2004年9月頃書いたけど公開できずにいたのですがついでに公開しちゃいます。何の参考にもならないとはおもいますが・・・)
実は行くかどうかかなり迷っていたのです。当日僕は前日入りで長野で自分のビッグバンドの本番。演奏後に打上げ欠席して飛んでいけばSTEPS AHEADだけは間に合うかもしれないけど、チケットかなり高いし、強行軍だし、どうしよう・・・なんて思ってたんですがネットオークションに捨て値で招待券が出回ってるという情報があり結果爆安でチケット入手。これで決心がつきました。
残念ながら今回あんまりチケット売れなかったみたいですね。実際行ってみると、雨のせいもありますが、非常に空席が目立つ哀しい状況でした。おかげで遅刻したにもかかわらず自由席3列目真ん中に座れましたが。でもSTEPS AHEADの出番になると結構客が増えて、しっかり盛況と言えるだけの人数にはなりました。チケット持ってれば入退場自由だったのでみんなどこかで雨やどりしてたのかな。
さてステージですが、本来ならMC紹介に続きメンバーが出てきてスタート、なのですが、時間がおしていたこともあったためか最初からステージにメンバーが登り準備が出来次第即スタートという進行でありました。お客の方もSTEPS AHEAD目当てが多く、マイケルが出てきただけで「うぉー!」。スターンが手を軽く振れば「いぇー」。ガッドが出てくれば「おぉぉー」。と異常な盛り上がり。マイケルは水分が怖いEWIが気が気じゃなかったのか、かなりはやくから中央に出てきてあれこれやってました。前の出演者のときはなかったのですが、ステージ上に透明ビニール屋根のテントが張られ、各メンバーと機材はその下に入ります。ステージには一応屋根はついていたものの、やっぱり多少隙間があったようですし、電気楽器だらけのバンド、特にEWIなんて水滴一つでオダブツだから懸命な策といえましょう。
さてこの時点ではEWIが本当に出てくるのかわからなかったので、とりあえずセッティング中懸命にEWIを探す。音源は無いか?Oberheimはまだ使ってるのか?双眼鏡を覗くもそれらしきものは見あたらず。かわりにあったのが舞台中央、マイケルのすぐ向かって左に、横向きにおかれたアップルマークも鮮やかなPowerBook G4。お?シーケンス用?ループ用?。????・・と思っているうちにマイケルがいじりだしたのがなんだか平べったくて四角い黒い箱。細い金属棒がついてる・・・AKAIじゃあ・・ない。往年のスタイナー・・・にしては細長く無いし・・・なんか両手で持って口でくわえてるし・・・・まさかあの自作機ステルス? にしてはちょっと形が違う・・・
なんて考えてたらマイケルおもむろに音チェックで下降スケールをブロロロロ・・・まごうことなきブッといノコギリ波!!!・・・おぉぉ。なんだかよくわからないが、ウィンドシンセには違いない!!!やったぜ!必死に記憶をたぐると似た形のものが・・・そう、スタイナー製の現行MIDI-EVI。でも、なんか両手ぶんキーがついてるよ・・・なんなんだあれは・・・・それはそうと、音源は??もしかしたらパワーブックでソフトシンセ???・・・・・・・。・・・・・・。・・・。
とかなんとか思ってる間に、セッティング完了。赤坂MCが出てきました・・・と思ったらいきなり前の指定席の人みんなスタンド!テンション高いぞ!僕自身はあんまりスタンド好きでないんですがこれはしかたない、僕もスタンド。後の人もみんな立ってる。テンション高いぞ!MCの雄叫びと共にオケヒット音「ジャン」そしてギターが「きゅういんきゅういん」まままままさかまさかこここここれはこれはあのベベベベベベイルート!!!!!まさかまさかまさか、、、いやもしかしてとは思っていたがLive In Tokyo 1986(以下1986)の再現をやるのかぁ?。マイケル中央で横向き半屈になりながらぶっとい低音フレーズを吹き始める・・・・ぎゃーDVDで見たあのポーズだよぉぉぉぉ夢じゃなかろーかぁぁぁぁ・・・てわけでここらへん完全にイッちゃっててアヘアヘ言ってました私。
メロディーが出始めたところあたりで、ステージ横の大画面TVにマイケルの手元の楽器がアップで写ります。周りのお客さん口々に「なんだあの楽器!?」。そしてやっぱり、どう見ても、MIDI-EVIと同じ箱です。スタイナー製MIDI-EWIであることが後日判明しましたが、ベンド操作は右手親指でEWI同様にやってました。両手でもってくわえて、ストラップ無しで演奏します。見た目違和感ありあり。
とにかく度肝を抜かれたまま、どんどん曲は進む。1986と同じ進行。やはりとことん1986の再現をするのか。でも18年順調に経験を積んだだけあって各人のソロの切れ味は格段にあがってる。とにかく凄い。そうそうベイルートの頭のメロディー、1986ではスタイナーとMIDIバイブのユニゾンでしたが、今回マイニイリが持ってきたのはMIDIの付いてない普通のバイブで、これに重なっているシンセ音はAdam Holzmanのシンセによるもの。他にも、スタイナーで和音になってたところがHolzmanの手弾きだったりと、当時のシンセサウンドにあって今回不足したもの(特に当時マエニイリが弾いていたシンセパート)を補足するため Holzmanを呼んだということですな。マイニイリは今回IN A SENTIMENTAL MOOD以外はシンセを弾きませんでした。
ベイルートのコーダ最後のキメ。ズレた!やっぱり慣れ不足は否めないが・・・全然許せるレベルだ!むしろいかにもワンナイト復活ライブらしくていいぞ!
曲が終わると周りの観客の、歓声というよりは、矯正、喘ぎ声。完全にイっちゃってる叫びがあちこちで響く。あきらかに普通の声じゃない。「いぇー」じゃなくて、「アヒャー」って感じ。
2曲目開始まで、結構静かな間が空く。さすがに長ーい譜面を見ながら演奏していたのでそれなりに準備に時間がかかってしまうようだ。始まったのはOOPS!。1986と同じ順番だ!。それにしてもこの曲良く聴くと難しい曲なんだけど、皆余裕で演奏している。いや途中キメのところベースがちょっと初見っぽい。でも「あれ、あはは、あ、こうか、こうだね、ほれほれ」てな感じですぐに感じをつかんでいる。流石だ。しかし、ガッド凄ぇ!一瞬でバンドに火をつける、いや既に燃え上がっているバンドにガソリン、いや、火薬を投げ込むような圧倒的なフィルイン。あおられてあおられてマイケル速くも全開。
2曲目終わるとマイケルによるメンバー紹介に続いて3曲目SELF PORTRAIT。またしても1986と同じ。わかった。完全に当時を懐かしむ企画なのだな。おそらくブッキングの時にそのように依頼したのだろう。うむ。ミュージシャンとして昔と全く同じことを繰り返すというのはどうかとも思うが、18年振り1回切りなら許されるだろう。むしろ僕も含め観客もあきらかにそれを望んでいる。だからこそのこの異常な盛り上がりである。企画の人、あなたは偉い!。でも1986と明らかに違うのはガッドの叩き出すビート。これのおかげで同じアレンジでも当時と違う息吹が吹き込まれている。もちろん各人のソロ、特にマイケルのソロはもう何を吹かせても圧倒的な余裕とスケールである。マイケルこの曲途中でスターンを見ながら狙って「Song For Barry」のアドリブ等で良く使った定番中の定番フレーズを混ぜる。マイケルと目をあわせながらニヤリとするスターン。ミュージシャン本人も楽しんでいるのがわかる。会場内のモニターもそれを絶妙のタイミングで大写しにする。今回カメラワークもかなり良かった。今「見たい」ところがかなり絶妙に写してくれた。スタッフにも感謝。
次はベースソロ。ジャコ風に始まる。18年経っているのがよくわかる。途中ディストーションはスマートにエフェクタを使用。18年のテクノロジーの進化でもある。かぶさるようにSAFARI。頭のシーケンスループはマイケルがパワーブックから出していたのかも。
SAFARIが終わってまたしても曲間がかなり空く。あまりにも長いので、ん?もしかしてこれでお終い???アンコールのコール待ちなの???と思うような微妙な間。たまらず最後方の観客が手拍子。と思うまもなく曲スタート。(今回のステージ、曲間の微妙な間だけが気になりました。)曲は、おおぅ。POOLS!1986からははずれたけど、うんうんこれもはずせないよね。STEPSがらみの曲ではたぶん一番有名な曲だもんね。ベース。微妙にズレル。曲の進行も途中までかなり、そろりそろりした探しながら・・・という感じで続く。うーん、やっぱりリハ不足ではあるな・・ベース、バイブソロと割とまったりとしましたがラストのマイケルのソロではこれをやれば盛り上がらないはずはないという必殺フレーズのオンパレード。出ましたフラジオでソラシドレ。サックスオタクの歓声が響く。ガッドも煽る煽る。
続いてマイニエリによる短いメンバー紹介ですがマイケルのEWI紹介の前にちょうどマイケルがEWIをドライヤーで乾かしてたんですね。それを見られたマイケル照れ隠しに自分の頭にドライヤーをあてる。観客から思わず笑い。続いてEWIソロパフォーマンス。それにしてもねぇ。まさかまさかEWIソロやるとは思わなかった。かなりプログラミングに時間をかけなければいけないことは明白ですからねぇ。世界中を飛び回る殺人的スケジュールの合間にそんなことができるはずはないと思っていたのに。Emagicのサイトとか読むと持ち歩いてるパワーブックでスケジュールの合間にいろいろやってるらしいですね。個人的にはマイケルがEWIを見捨てていなかったってだけでじゅうぶんうれしい。嬉しいなあ。
さてステージのほうはマイケルを残して他メンバー退場。EWIソロですがEWIの音色は全てPowerBookからです。確認はできませんでしたがドラムシーケンスとかもPowerbookだと思います。ただこれらはEWIでの生演奏ではなく打ち込みによるものも多かったです。EWIの音色はコロコロ変わりますがこのときマイケル微動だにせず。フットコントローラ踏んだ形跡も、パワーブックに触る形跡もなし。EWIに音色切り替え様ボタンがついているのでしょう。ソロパフォーマンスの構成や使った音色は、あえて言うならば1992年頃の「Return of Brecker Brothersツアー」でやっていたソロパフォーマンスに似たイメージです。
目新しい音としてはハーモニカ、ホーミー風ボイス、ヨーデル風ボイス、エスニック女性ボイスに虫の声、等々・・・につづき、お馴染みバイオリン風音色の次は、フィルターのかかったノコギリ波とミュートトランペットのレイヤーで和音演奏、さらにディストーションギター音色で盛り上げて、アナログシンセ音に戻って落ち着く、というマイケルお得意のパターンの後、そのままIn A Sentimental Moodへなだれ込み。「キターーーーー!!!」。マジで涙出た。伴奏は、いつのまにか現れていたマイニエリがHolzmanのキーボードで弾いてます。1986当時のフレーズも織り交ぜて、出た出たシラソミ下降フレーズ。おお、右手親指ベンドやってるやってる。クイクイしょっちゅう動いてる。感激だ!。さて、今回音源はMIDI駆動なわけですが、それが起因のフィルターのざらつきなんて全然感じなかったです。IN A SENTIMENTAL MOODのようなフィルター開閉バリバリで静かな曲でさえ。いいなあ。PowerBookでもちゃんとこういう音出るんだ。凄いなあ。
つづけて期待通りTRAINSに突入。Sentimentalが終りそうなところで重なるギターカッティング。うわああぁぁぁぁぁぁ!キターって感じ。
他のみんなが準備し終わるまで、マイケルソロ。と、いきなり何を思ったか、吹きだしたのはメセニーの「80/81」一曲目のメロディー。みんななんとなくつられてしまって、なかなかメロディーに入れない。マイケルとマイニイリのアイコンタクトでメロディーに入る。ピアニッシモのTUTTIに続いて、「じゃーーーーん」のフォルテッシモ。観客全員「待ってました!」の歓声。涙のちょちょぎれる瞬間!!偉大なる予定調和!!!マイケルのソロ、ガッド煽る煽る煽る。マイケル叫ぶ叫ぶ叫ぶ!もう正気の沙汰じゃない。さらに続けて、スターンのソロ。期待通りのいつものパターンで、どこまでも登り詰めます。ガッドはさらに、倍テンで刻んで煽りまくります。もうスターンの音ディレイの本数多すぎ、PAも飽和状態でなにがなんだかわかりませんがドラムはよく聞こえます。ガッドやっぱり凄すぎます。ベースも負けじと倍テンででからんできます。マイケルはもう音程のない歪んだ音色で叫びまくります。うおぉぉぉぉぉ・・・・。そんな狂乱のウチに終了。鳴り止まない拍手の中、ステージ中央にメンバーが集合して肩を組んで観客に一礼。メンバー退場して舞台暗転。しかし当然ながらアンコールの拍手はなりやみません。いつ果てるともしれないアンコールの拍手・・・・・
しかし長い。3分くらいはアンコールしていたでしょうか。やっと全員出てきます。全員自分の楽器に近くなったところでやっとステージ照明点灯。大歓声がおこります。いや、個人的にはここまでガッドのソロがなかったんで、1986と同じようにガッドのソロにマイケルがからんで、TRAINSのREPRISE で終わりか?とも思ったのですが、シンプルに全員で「TEE BAG」を演奏。 STEPS発祥のアルバム「SMOKIN' IN THE PIT」の1曲目ですね。STEPSはTEE BAGではじまりTEE BAGで終わると。良い企画だ!すばらしい!。手拍子に丁度良いシャッフルビートのもと、ソロが続きます。最後にスターンとマイケルのバース交換。途中、興がのったマイケル、テナーからEWIにもちかえて、シンセ音でスターンと絡みます。うひゃひゃ。ちょっとPAの音量が小さくて聞こえずらかったけどね。で、そのままテーマにもどったのですが、本来テナーの筈のテーマ、いきがかり上EWIでそのまま吹くことになって、マイケル、途中オクターブかえたりとか、かなりあせってました。
終わると同時に客席横からポンポン花火の打ち上げ。リズムのある打ち上げで、みんながそれを見ながら拍手している間に、舞台は暗転、メンバーは既に去っていました。
MCがあって、終わり。いやー、ちょっと客が少なめとか、雨とか、いろいろありましたが、とにかくSTEPS AHEADで全て帳消しになった。そんな至福の時間でした。本当に良かった。見といて良かった。少なくとも私のなかでは伝説のライブになりました。ありがとぉぉお!
なお・・・・このステージが好評だったためか、2005年夏からSteps Ahead再結成ヨーロッパツアーが組まれました。日本にもまた来てくれいっ!!
AKAIがSteiner-MIDI-EWIを参考にしつつ新型EWIの開発を進めていたことは前述しましたが、その後2005年9月に新型EWI"EWI4000s"を発表、2006年3月頃一般販売開始しました。その結果としてそのスペックは何と「音源内蔵」!!!いや、恐れ入りました。正直そこまでやるとは想像だにしませんでした。すばらしい!。
音源方式はアナログモデリングでリアルアナログでは無くなりました。MIDI直出し、形は従来EWIを踏襲し縦長タイプでした。また、2006年6月末にはOSがver.2にバージョンアップし、CCの割付もできるようになり、EVI運指モードまで装備。今後マイケルがEWI4000sを実戦投入するかはまだわかりませんが、素晴らしい製品がでてきたことは本当に嬉しいです。
さてマイケルのほうは2005年7月頃からマイケルは骨髄異形成症候群にて入院、長期治療を続けていましたが、最初の朗報が2006年3月末、Dave Liebmanのサイト等で、「徐々に回復しつつありEWIをいろいろいじっている」という旨が明らかになりました。体力的(?)にサックスをバリバリ吹くまでは回復していないがEWIなら吹けるくらいになったのかな?と想像していたのもつかの間、New York Timesの記事によれば2006年6月23日のJVC Jazz Festival のハービーハンコックのステージにマイケルブレッカーが飛び入り、テナーで一曲演奏したそうです。入院以来初ステージということで大変嬉しいニュースでした。
さてこの入院期間の間にAKAIは新EWIであるEWI4000sを発表、さあマイケルは果たして4000sを使うのか、果たしてSteiner-MIDI-EWIのままなのか。Mt.Fuji2004で見せたあのパフォーマンスは4000sでも出来るのか???と思っていたところ、この頃に収録されたと思われる、マイケルが自宅スタジオでEWI4000sを吹く動画がhttp://www.michaelbreckerliverecordings.com/等で公開されました。動画にはAKAIのロゴがかぶってますので、AKAIの展示会等でのデモ用の動画かと推測しています。機材的には、EWI4000sからMIDI経由で、パソコン(Mac)上のソフトシンセを鳴らしてると思われます。 2004年からSteiner-MIDI-EWIで吹いていた音とかフレーズとか仕込み音色とかがほぼそのままいっぱい出てきます。その他関連情報として
がありますが、これらを総合すると、2006年8月現在ではEWI4000sと、Steiner-MIDI-EWIを併用しているような雰囲気です。今後が注目されます。
(Aug.15,2006追記)
書きたくないけど書きます。一時は回復の兆しがありましたが、結局骨髄異形成症候群から白血病に進行、米国時間2007年1月13日、白血病のためニューヨークで亡くなりました。57歳。
しかしながら直前まで音楽活動は行われており、2006年夏頃までは音楽活動が行われており、その頃録音したリーダー作も3月に発売予定。またChris Minh Dokyの新作にEWIで参加しています。今後もEWI含めた遺作が多数発掘されるのでは無いでしょうか。
akai-pro.jpおよびakaipro.comにはマイケル他4人のプレーヤーがEWIを吹く動画が公開されています。現在の所一般に見れるマイケル最後のEWI映像だと思います。
この訃報に際しakai-pro.jpが出してくださったコメントが全ウインドシンセ関係者の気持ちを代弁していると思いますのでここに引用します。
---以下 http://www.akai-pro.jp/pgs/right/right_news.html#20070115 より引用----
世界的ジャズサックスプレーヤーであり、また、AKAI professional EWIシリーズの開発及び発展に多大な協力をしていただいていたマイケル・ブレッカー氏が2007年1月13日、永眠いたしました(享年57歳)。
氏の協力無くしてAKAI professional EWI、そしてウィンド・シンセサイザーの現在はあり得なかったと言っても決して過言ではありません。
心よりご冥福をお祈り申し上げます。
2007年1月15日
AKAI professional
Pro Audio Japan K.K.
(Jan.28,2007追記)
当サイトはアマゾン・アソシエイトです。→amazon.co.jp
Aug.15,2005作成
WX5 workbook |
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(EWIを吹いてないCDも含む) 気に入ったのがあったら是非。(^^;) by Kirino |
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