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「スクリーム」に関する実験と考察

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ぎあ [E-Mail] 2000/10/23(月) 21:43:37
〜はじめに〜
このスレッドでは、VA音源(VL70m)の「スクリーム」という特定のパラメータに関する実験と考察を
行いたいと思います。
ですから、「面倒な話は嫌だよ。音色設定だけが欲しいのさ〜」とおっしゃる方には、少々辛いかも
しれませんが、よろしければお付き合いくださいませ(笑)。
尚、僕自身は単なるウインドシンセ好きのユーザーに過ぎず、文章書きを含めVA音源に関しても
素人ですので、乱文(おまけに長文になりますけど)についてはお許し下さい。
又、誤記(解釈の違いによる間違い等も)については、訂正して頂けたら幸いです。


それでは本題に入ります。
VA音源には、その考え方が非常に難しいパラメーター(設定項目)があります。
特に「スクリーム」については、その説明が難解だと感じました。
(VL70mをお持ちでない方の為に、その説明を下記に書き出してしてみます)

「スクリーム」:
生の楽器では、さまざまな影響により振動の状態がカオス(混沌とした状態)になり、
絶叫したような音になることがあります。
この音を再現するためにドライバーの働きを強調する機能のことです。(取扱説明書P52参照)

・・・とあります。
残念ながら、この文章から音色への影響を想像するのは、正直言って容易ではありませんよね。
これを最初に読んだ時の僕の感想は、「なんだ、こりゃ?よく分からんぞ〜・・・」です(笑)。
そもそも「混沌とした状態の働きを強調する」ってどういうことなんでしょう?

以下、スクリームによる効果が音色にどのように影響するのか、つまり「混沌とした状態の働きを
強調する」ことを実際に音にして、確かめる実験と考察を行いたいと思います。

ぎあ [E-Mail] 2000/10/23(月) 21:58:41
まず最初に”金管楽器”を模したドライバーで、その効果を確かめてみます。
厳密には、取り上げるプリセット音色ごとにその効果は異なるかもしれませんので、別スレッドで
MTさんが取り上げたPr2-018「FluglHr!」に絞ってその効果を見てみます。

まず、この音に下記設定を加えてみます。
●EDIT→CONTROL
Scr CC No. = off → 02 (ブレス=息でスクリームのコントロールを行います)
ScrCtrlDpt = +00 → +80 (とりあえず、効果を分かり易くするため、値を大きめにします)

この設定にした後、WXでドレミ・・・と吹くと、とても音痴な演奏になってしまいます。
どうやら、この音色での”スクリーム”は音程への影響が顕著なようです。
しかも、それは常に同じではなく(これでピッチベンドとは違う事が分かります)、まるで
”カラオケが大好きなのに、何度歌っても間違いに気がつかないオジサン”
状態です(笑)。なぜこうなるのでしょう?

上記した「スクリーム」の説明文を読み返してみます。
>さまざまな影響により振動の状態がカオス(混沌とした状態)になり、
>この音を再現するためにドライバーの働きを強調する機能のことです。
ふむ・・・・まずは、「金管楽器における、カオス(混沌とした状態)とはナニか?」という事と、
「”その状態(働き)を強調する”とはどんな事を指すのか?」を考える必要がありそうです。

金管楽器におけるカオス(混沌とした状態)は、やはりマウスピースに振動を伝える唇の状態
そのものにあると思います。(要するに唇をしめたり、ゆるめたりする状態・・・ということです)
マウスピースに触れる唇は、振動を一定に保とうとしますが、実際には一定に保つ事は非常に
困難で、頭では”一定に保っているつもり”でも、どうしても息の量や頬の筋肉の状態に左右され、
不安定な状態を生み、それは連続的に発生しているはずです。

トランペットなどの金管楽器奏者は、「完全に一定にならない振動を、必死に保とうとする」ことで
メロディを演奏できるワケです。
逆に「振動を一定に保つ事」を怠れば、当然音程はくずれ、音痴な演奏になってしまいます。

つまり、VA音源における金管楽器を摸したドライバーを持つ音色で
「スクリームの値を増加する=混沌とした状態の働きを強調する」とは、
「振動源である唇の不安定な状態を、加えていくこと」と言えるのではないでしょうか?
音程への影響が顕著であることを考慮して、少々乱暴な言い方をすれば、
「正確で安定しているはずの電子音を、”ほどよく”音痴にしてやること」とも言えそうです。

では、Pr2-018「FluglHr!」でスクリームの値をブレスでコントロールする場合、
どの程度に設定するのが、”ほどよい”のでしょうか?探ってみます。

”ScrCtrlDpt”の値を、 +80から徐々に値を少なくしていきます。
そして、ドレミ・ドレミ・・・・と繰り返し音を鳴らしていきます。
特に「ド」の音を強く吹きながら値を減らすと、その「ド」の音程における、不安定な
音程の発生する回数が、減って行くのが分かります。
僕のWX5の場合、”ScrCtrlDpt = +16”で、ほぼ音程が安定しました。
そして、この”ScrCtrlDpt = +16”での音を、”ScrCtrlDpt = +00”の場合と比較すると、音程は
安定していながら、音の立ち上がりに金管楽器特有の「ブルッ」とした感じが加わっていることが
分かります。
これで、このスクリームを息でコントロールすることで、息の吹き込みが
○ 弱い場合で・・・唇の振動が安定した状態
○ 強い場合で・・・音程が安定する範囲で、唇の振動が不安定になった状態
を表現できるようになりました。

普通、サンプラーやPCM系シンセで、この「ブルッ」とした感じを表現するには、単に「ブルッ」という音
が含まれた波形(録音された音)を”再生”するだけですが、VA音源では、「スクリーム」という
パラメーターによって、実際に「ブルッ」を”発生”しているワケです。
ココが”バーチャルアコースティック”な部分ですね(笑)。

尚、WXでVA音源を鳴らそうとした時、ブレス(息)よりリードを噛む強さでスクリームを
コントロールした方が自然で良いかもせれません。
音程を保とうと、必死でリードを噛む力を加減しながら演奏するのは、難しいかもしれませんが、
こうすることで”ただ吹けば鳴る”はずのWXが、”発音そのものも、訓練によって上達する
本物の楽器”になるはずです。
どなたか、試されたらご意見をお聞かせください。

次は木管系ドライバーで「スクリーム」の効果を試してみたいと思っていますが、僕はトランペットや
ホルンの経験はあっても、サックスやクラリネットなどの経験がありません。
どなたか、試しにやってみません?

magro [E-Mail] 2000/10/25(水) 03:08:39
「スクリーム」。音色のキャラクターを決定付けるのに一役買う個性的なパラメーター
ですよね。倍音も非常に豊かになるし、ぜひつかんでみたいところです。

早速いろいろ試してみました。やはり金管楽器で不安定さが顕著ですね。
モード周波数が非常に影響しているようです。しかも各楽器の通常使用する音域
での効果が大きく感じます。特に高音域を担当する楽器でその傾向が強いと思います。

モード周波数とはVL70mのリストブックのQ&Aによると
>管にはモード周波数という飛び飛びの周波数で共振しやすい値と
>いうのがあります。つまり、同じ管の長さでも唇の使い方で
>高い音を出すことも出来るのです。
ということですが、ぎあさんのおっしゃる
>「振動源である唇の不安定な状態を、加えていくこと」と言える
>のではないでしょうか?
の部分がその音程(例えばソの音)を出した時にその管の長さでの共振しやすい
周波数をメインにその他の周波数がCtrlDptの値をあげるにつれ折り重なっていき、
最終的にカオスになる。と考えられます。
…これはCtrlDptを+50位にして吹きこみ加減をいろいろ変えながらやってみると
特定の2〜3種類の音程が出ることで確かめられます。
ところでこの出てくる2〜3種類の音程はいわゆるその音程を出す運指で
唇の調整で出る他の音なのでしょうか?(金管経験無いもので…)

また上記のように特定の音域(Pr2-018「FluglHr!」だとG3あたりからC5あたり)
では変化が顕著(逆にいうと突拍子も無い音程になる部分)ですがそれよりも上だと
ただ倍音が増えるだけといった感じなので、逆に下をばっさりあきらめ、オクターブ
上でカットオフで倍音を好みに削って音に張りを出すなんてハズシ技も使えそうです。
トロンボーンあたりの中音域の楽器だと結構うまく行きました。

対して木管楽器ではモード周波数が1ないし2種類であるということが理由の一つだと
思うのですが、音程の変化はさほどではなく、管全体が共振するような感じで倍音が
増えていき、最後に破錠するような感じでした。Pr2-073「AltoSax!」ではD4〜E4
あたりの変化が最も顕著です。(E♭管だとオクターブ変わりですか?)
スクリームの効果はCtrlDpt +20位から確認できますが、音程の変化自体は+100前後で
無いと明確には起こりませんでした。木管と金管ではずいぶん違うようですね。

またフルートは一味違うようで変化のまったく起きない音色もありました。
ピッコロ系では音程変化がそれなりに起こります。

こうなると管楽器以外の音色も気になります。
擦弦楽器では木管のような傾向、發弦楽器ではほとんど変化が無い
ような状態でした(ハーモニクス出るかなあと期待したのですが…)

いやあひとつの効果に絞って色々試すというのは非常に勉強になりますね!
このようなパラメーターによる効果の違いがVA音源の難しさであり
また魅力なのだとつくづく感じました。
感覚的な部分も多いので「?」というところは流す(笑)かご指摘ください。
長文失礼しました。

ぎあ [E-Mail] 2000/10/25(水) 21:10:59
magroさん、詳細な考察ありがとうございます!

>ところでこの出てくる2〜3種類の音程はいわゆるその音程を出す運指で
>唇の調整で出る他の音なのでしょうか?(金管経験無いもので…)
トランペットやホルン、ユーフォニウム、チューバなどは音程をコントロールするはずのバルブは
3〜4個しかついていません。ということは当然同じ運指で異なる音程を鳴らすことになります。
例えば、なにもバルブを押さない状態でも、ド・ミ・ソ・ド・ミ・・・と鳴らすことができます。
つまり、管の長さ=音程の違い・・・では無いということです。
(これが”VL70m Q&A”に出ていた、モード周波数のことですね)

・・・ということは、設定値次第でブレスコントローラーだけ(運指なし)でもメロディを演奏することが
できるかも!?
(もちろん、使う音程は限られますが、ファンファーレ用ラッパなどはマウスピースと管体とベルしか
ありませんから、理論的には同様の演奏が可能と言えそうですね)

>また上記のように特定の音域(Pr2-018「FluglHr!」だとG3あたりからC5あたり)
>では変化が顕著(逆にいうと突拍子も無い音程になる部分)ですがそれよりも上だと
>ただ倍音が増えるだけといった感じなので、逆に下をばっさりあきらめ、オクターブ
>上でカットオフで倍音を好みに削って音に張りを出すなんてハズシ技も使えそうです。
おぉ!さすがmagroさん!!これ、良いアイデアですね〜。
音程への影響は高音部分へ行くにしたがい少なくなって、スクリームを
音質コントロールのパラメーターをして使えそうです。
Pr2-018「FluglHr!」で試すと、高音部分で確かに”張り”が出ました。う〜む、イイです!

木管楽器のみならず、擦弦楽器に関してまで詳細な考察をしていただき、大変参考になりました。
”スクリーム”は音色によって様々な効果や影響、または”ハズシ技(笑)”が得られるようです。
本件に関しては、ひき続きご意見をお待ちしたいと思っています。
僕もおもしろい効果を見つけたら書き込みますので〜。

MT 2000/10/26(木) 00:09:07
magroさん、ぎあさん、さすが理論的で感心しました。
私も色々と試しましたが、「そのとおり」でした。
またまた「FluglHr!」で試した内容です。
ScrCtrDpt=+15(音程がひどくならない程度)とし、中高音に張りを与えます。
元の音に比べるとかなり「攻撃的」な音になるので、EDIT−Fil&EGの
Trebrle=-20とし、ギラツキを押さえます。
低音部は使えませんが、奥行きのある音になったのでは?と思います。

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